ネガティブさも皮肉も、昇華させれば芸術になる
【あらすじ】
「私」は、ある日出会った天使と遊ぶようになる。
天使は、ヒトが死ぬことに何も感慨を覚えない。
「人はあらゆる生物の最下等」と言い切る。
私はそれに反論もできず、ただ彼の魅力の虜になる。
「もちろん人類最大の野心というのは人間を殺すことであり、
現に人間の歴史はまず殺人をもってはじまってるわけだ」
天使は、ヒトである「私」から見ると真っ黒なセリフをつぶやく。
しかし、それは黒いわけでも白いわけでもなく、ただ純粋なだけだ。
天使の言葉はどこまでも分け隔てなく、ある意味で赤子のよう。
しかし人間である私が読むと、そこに著者の人間に対する強い憎悪を読み取らずにはいられない。
人・人生に対する暖かい眼差しを感じる「トム・ソーヤーの冒険」と同じ著者が、
年を重ねた後にこのような物語を作るようになるのだ。
生きる・生き続けることの壮絶さをひしひしと感じる。