ウェブ人間論から「モテ」を考える

そうだ、梅田さんも「理系男子」だったんだ!

梅田 望夫, 平野 啓一郎 / 新潮社
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ウェブ進化論」でヒットを飛ばした梅田望夫さん(id:umedamochio)と、京大在学中に芥川賞を受賞した平野啓一郎さん(id:keiichirohirano)の対談本です。この本のステキなところは世の中でごまんと紹介されています。しかし私がこの本を読んで記憶に残ったのは、梅田さんの理系男子っぷりでした。


昨年〜今年にかけて「理系院生(の男)はダメだ!」という標語(?)流行って、女友達とよく言い合っていたのですが、本作での梅田さんは言葉の端々で『理系院生(通称:理系男子)に良く見られるダメっぷり』を暴露しています。

「理想の恋人に出会えるか?」


梅田:僕なんかは学生の頃あんまりモテなかったんだけど、中高と男子校で大学は工学部で、やっぱり出会いの機会が圧倒的に少なかったことが大きな要因だったような気がします。そこがぜんぜん違えば、もっと楽しい学生生活が遅れたかもしれないなあって。だから今のミクシイとかを見ると、自分の時にこれがあったらどうだったんだろうって羨ましく思いますよ。気になる女の子と出会った場合、若い世代だったらまずミクシイに彼女の情報があるわけでしょう。誰を経由すれば知り合いになれそうか、っていうのもわかるし。とりあえず、何か始まる確率が高いわけですからね。

言っていることはもっともですけど、ラヴがあれば「もっと楽しい学生生活が遅れたかもしれないなあ」とか、「まずミクシィに彼女の情報がある」とか、「とりあえず、何か始まる確立が高い」とか、ダメすぎます(笑)。


何がダメかって? (梅田さんくらいの方になれば「頭」ではちゃんとわかっていらっしゃるんでしょうけれど)ラヴがあるから大学受験に失敗する人は腐るほどいるし、ミクシィに載っている女子の情報なんてアテにならないものだらけだし、何かが始まってもその後にうまく運べるかどうかは本人の手腕次第なのです。しかし理系男子は往々にして「機会があれば、俺だって!」と思いがち……という法則に、梅田さんもしっかりハマっているところが、個人的にツボに入りました。

「魅力ある人間とは?」

また、梅田さんはコンサルという職業柄もあってか客観的分析をよくなさっています。が、モテは分析では割り切れません。論理的思考ではどうにもならないのです。しかし理系男子はどうにも理屈で攻めたがる。そんな「理系男子」っぷり全開の梅田さんと比べると、平野さんの文系インテリっぷりが際立ちます。


梅田さんは「ネットで増幅できる部分とできない部分を分けて考えたとして、その割合はどれくらいなのか?」という問いを、平野さんに投げかけます。その問いをさらりと流して彼はこうコメントします。


平野:人の好き嫌いってどういうことなのか、僕もよく考えるんですけど、例えば人に好かれるふるまいというのは、ある程度までは容易に出来ると思うんです。(中略)少なくとも、嫌われないふるまいというのは、こういう言い方をすると不愉快に感じるだろうとか、こうすれば喜ぶはず、というような社会的なコードがあって、それを学んでいけばいいわけです。(中略)しかし、じゃあそれ以上の付き合いになるかどうかというのは、また別の要因があると思うんです。なんである人を好きになるのか、というのは、かなり複雑なことでしょうね。


その通り。まったく当たり前なことなのですが、こういうことを人と話している最中にさらりと言葉に出来る人は意外と少ないものです。やたらと系統分類したがる人も多いですしね。「あの人はAタイプだから、こうすればいいんだよね!?」って真剣に言う人もいますしね(それが悪いわけではありませんが、男子諸君はそんなことで真剣に悩まないでください・笑)。

ブログで自分を発見する?


平野:独りになったときに吐き出す言葉こそが本当の自分なんだっていうのは、分かるんですけど、正しくないと思うんです、やっぱり。ある人がどんな人かっていうのは、結局、他者とのコミュニケーションの仲でどういう言動が出来るかということにかかっている。誰もいない場所であれば、どんなことでもいえるけれど、本当はどこにも存在してないんでしょう。


うーん、平野さん、かっこいいなぁ。。。←(結局ここに落ち着く)

言ってることは当たり前なのですが、30歳で、こういう話題で、正論をキチンと言葉にする人って、久しぶりに見た気がします。押し付けがましくない知性を感じさせます。教養のなせる技でしょうか。

ネットと恋愛

最後に、第1章「ウェブ世界で生きる」の項で触れられているネット恋愛について言及しておきます。


平野:この歳まで色んな結婚式に出席してきて、ネットで知り合って結婚した、という紹介のされ方をしたカップルをまだ見たことが無いんですが、実際にはいるんじゃないかとも思う。ある種のマイナスイメージが働きがちで、ちょっと言いにくいというのがあるかもしれない。「友人の紹介」ということになっていたり。


さすが、鋭い。たぶん、30歳前後なら1組はいると思います。
私は現在24歳ですが、周囲で、私が知っている人(の中ですぐに思い出せる人)だけで、ネット経由で知り合って結婚したカップルが2組、付き合っているカップルが3組います。ミクシィが出てくるまではシークレットにしている人が多かった気がしますが、最近は「ミクシィで知り合った」と明言する人も出てきました。なかにはメール交換の段階からお互いに好意を寄せ合っていたというカップルもいます。インターネットはコミュニケーションツールのひとつですから、人の恋愛様式を変化させていくのは至極最もなことでしょう。