日本に疲れたときに読むと良い本
- 作者: 村上龍,伊藤穰一
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2006/05/26
- メディア: 単行本
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村上龍と伊藤穣一ことJoiItoの対談を読んだ。私はこの2人に興味があって、継続的にウォッチしているので、内容は(自分にとって)当たり前のことばかりだった。けれど、最近の村上龍作品を読んだことがない人や、Joiを知らない人は、衝撃を受けるかもしれない。国籍を飛び越えた視点や、ちょっと聞くと過激に思える表現が目につくから。
表面は過激かもしれないけれど、すべて2人がいつも述べている内容と同じなので、私は「言い過ぎだ」と思うことはなかった。以下に私が一番気に入った会話を書き留めておく。が、Joi(伊藤)の発言は皮肉めいた冗談ではなく、シリアスな危機感の表出であることを断っておいたほうが良いかもしれない。
「分散型のネットワークとテロ組織」の項にて。イラク戦争の話から派生して・・・
村上「戦争も戦術も、テクノロジーの変化で変わっていく。第一次大戦で機関銃が登場して陣地線の戦術が一変した。その前のナポレオン時代の戦争とか、アメリカの南北戦争とかは、ひとかたまりになった歩兵隊がまとまって進軍して、一斉射撃をしたあとに、銃剣を付けて敵陣に突撃する。
ホッチキス式機関銃をつくった人のレポートがあって、第一次大戦で機関銃が登場し始めたころは、信じられないことに、機関銃で兵隊がばたばたと死んでいるのに、後から後から兵隊たちが隊列を組んで進んできたらしい。戦術というのは急には変えられないんだよ。
しかも先頭の将校はステッキを持っていて、優雅に指揮をとりながら、進んできたらしい。もちろんステッキの指揮官はあっという間に死んだ。結局、部隊全体も機関銃で全滅してしまう。それで、何万人かが死んだあとに考えるわけ。これではまずい、とりあえず機関銃に対抗するためにまず塹壕を掘ろうと。(後略)」伊藤「日本がそのステッキの指揮官のようにならなければいいけど」
2人の話題テーマは、多岐に渡る。個人的に面白かった項目は下記の3つ。
- コミュニケーションは喜びそのもの
- 言葉の定義がないままの議論
- How to be happy?
対談形式なので、さらりと読める。目次も整理されているので、興味があるところだけ拾い読みしても良いかもしれない。
追記
上の引用を読むと、暗い話題を扱った本のように思えてしまうかもしれない。
本の帯に書いてある村上龍の言葉のほうが、内容の紹介としては適切だろう。
この本は、ポジティブな本である。だから読者は、できるだけ楽しみながら読んで欲しい。
しかめっ面をして読むのではなく、できれば好きな飲み物とともに、リラックスして、胸をわくわくさせながら読んでいただきたいと思う。