学術論文誌の今とこれから
「研究成果発表の手段としての学術誌の将来」というイベント@国立情報学研究所に行ってきました。備忘のためにメモを記録。
雑誌論文が研究成果発表の手段であるのはいつまでか(土屋俊先生@千葉大、文学)
「論文は絶対的な評価尺度ではない。学術研究成果のごく一部である。」という話。
追加で出されていたスライドでは"論文が研究成果の「結晶化」した形態である時代はもう終わる"、"ずっと改訂され続ける、くらいの考え方の方が誠実"、"むしろ論文にいたるまでの過程が重視される"といった話も。
「研究成果発表の手段としての学術誌の将来」・・・SPARC JAPANセミナー2008に行ってきた - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
という話を聞いて「ずっと改訂され続け」てしまったら、出版の、ひいては研究の信頼性がなくなってしまうのではないかと感じました。
電子出版物の改訂取り扱いについて、あまり考えている人がいない?のかもしれません。が、そこらへんの意識がないまま電子出版物が増えて、出版物の改訂が音もなく為されるようになったら、出版への信頼性がなくなって困ったことになるのではないかな、と思います。そこらへんを出版関係者(中身を書く先生も含む)はちゃんと意識してるのかしらと、若干首をひねりました。
数学系ジャーナル及び紀要の過去と現在、これから(行木孝夫先生@北海道大、数学)
行木先生は以前日本数学会で電子化関係の仕事をなさっていたとのこと。
物理系ピアレビュージャーナルとオープンアクセス(植田憲一先生@電通大、物理)
- APS(アメリカ物理学会)でも中国・インド論文の伸長がめざましい
- 中国、インド各国内でも、論文の欧米流出危惧は大きい
- ピアレビューはボランティアベースであり、対等な関係が求められる
- 自然科学の下では、人はみな平等
- しかし日本では「えらい先生」の査読が多い
- 欧米では、若い現役の教授に依頼するし、レビュアー経験も業績としてカウントされる
- 論文掲載の基準はコミュニティの質・タイプに依存する
- コミュニティのサイズに大きく影響を受ける
- オープンアクセスジャーナル:事例、誌面例
- ビジネスとの両立をどのようにするか
- 学会には研究を定着する役割とともに、研究者を育てる役割がある
「オンライン上で1つの論文があれば良い、という発想がある」という話も出て、その流れで「オンライン出版、インターネット配信により、著作権が著者に回帰するのでは」ということを、仰っていました。実際にその流れは実現しつつあると思いますし、止めるだけナンセンスでしょう。