国会図書館の書籍、ネット有料公開へ?

各種報道

今日のasahi.comにこんな記事が載っていました。
朝日新聞デジタル:どんなコンテンツをお探しですか?

また8月17日に行われた「ACADEMIC RESOURCE GUIDE(id:arg)」によるイベント「この先にある本のかたち−我々が描く本の未来のビジョンとスキーム」で長尾館長が語った構想が、CNETのイベントレポートタイトルに使われていました。
国会図書館、書籍をネット配信へ--利用料は1冊数百円程度に - CNET Japan

いっぽう、今月初めにも日経新聞に「国会図書館の本、有料ネット配信 400万冊対象、11年にも」という記事が掲載されていました。
国会図書館の本、有料ネット配信 400万冊対象、11年にも(NIKKEI NET)

しかしこの日経新聞の報道に対しては、国会図書館自らが、その一部を否定する声明を出しています。
国立国会図書館、有償デジタル書籍配信事業に関する日経記事について一部を否定(hon.jp)

かんちがい

私はこのhon.jpの「国会図書館が否定声明を出した」という記事を読んで、「まだこの「有料公開」は構想段階で、表立っては動いていない状態なんだろう」と勘違いしていました。なにかおかしいな?と思って、この国会図書館の声明を、もう一度きちんと読んでみました。(以下、太線は引用者が追加)

1 まず、本件記事(有料配信の部分)について、国立国会図書館には、日本経済新聞社から取材はございませんでした。

2 次に、当館のデジタル資料の館外提供に関する取組みについて、御説明いたします。
(1)当館は、デジタル化した資料及び将来電子的に納本される書籍等を、著作権者及び出版社の利益に配慮しつつ、国内のどこからでもアクセスできるような仕組みを模索しております。その仕組みの要点は、公共的な団体に当館のデジタル資料を無償で提供し、当該団体が公衆に有料で配信して、その料金のうちから権利者等に還元するというものです。
(2)今年に入り、日本文芸家協会(著作権者の団体)、日本書籍出版協会(出版社の団体)及び弁護士有志と、このような仕組みの実現の方法について話し合い、研究会を設けることを検討しています。当館は、その研究に対して積極的な協力を申し出ております。

3 以下の点で、本件記事は、事実と相違すると考えます。
(1)当館は、記事に掲載されている「協議会」の主体でも、またデジタルデータ配信の主体でもなく、民間等が設立する(公共目的の)団体にデジタルデータを提供する仕組みを検討している段階であること。
(2)また、記事に示されたスケジュールについても、決定しているものではないこと。

なるほど。日経新聞の報道はすっぱ抜きだったけど大枠では当たっていて、配信方法(誰が主体になって配信するかの構造)とスケジュールを除いてはほぼ事実だった・・・というわけです。

先日id:mimofuuくんのブログに、勘違いした状態でコメントを残していました。ごめんなさい。お詫びして下記の通り訂正します。

まとめ

  • CNETの記事タイトルの通り「国会図書館、書籍をネット配信へ--利用料は1冊数百円程度に」の方向に向けて話は進んでいます。
  • ただし国会図書館が直接配信・課金するわけではありません。
  • 音楽業界のJASRAQにあたる「電子出版物流通センター(仮称)」を設立して、そこで許諾管理・使用料管理を行おうという構想です。
  • この配信方法については朝日新聞の図解がわかりやすいので、ご参照ください。
    • http://www.asahi.com/national/gallery_e/view_photo.html?national-pg/0825/TKY200908250205.jpg

感想

日本語書籍のみと思われる(?)ものの、国の公的機関が具体的に動き出したことで、日本の出版産業全体の流れも変わっていくと想像できます*1。面白くなってきたぞと思う気持ち半分、これに対応してどういう動きが出てくるのか、それに自分はどうやって追いついていこうかな*2と考える気持ち半分です。
面白くなってきたぞの中身の1つは、たとえば、まだ少ないとはいえ既存の日本国内電子書籍サービスもあるわけで、そこらへんとどう権利関係に折り合いをつけていくのかしらん? ということです。また日本国内で発行された英語書籍も少なからずあるわけで、そこらへんの取扱はどうなるのかしらん? などなど、考え始めると止まりません。1つ1つ調べて/考えていきましょう。

*1:良くも悪くも、日本はやっぱり「お上に従え」。

*2:中小出版社はどうしても後手後手になるんだけど、その中で自分はどうやって泳いでいこうかなー。などなど。これも考え始めると/書き始めると止まりません。1つ1つ考えていきましょう。