21世紀の寺山修司:梅森浩一


梅森 浩一 / ディスカヴァー・トゥエンティワン
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豪速球のタイトル、前書きで断言する「恋愛至上主義は幻想」、本文における「「天職も運命の人も幻想」というのが人生の大前提」・・・、買う瞬間から読書中までたくさんの驚き(と苦笑)を与えてくれる一冊です。しかしこの本、買うのがすごーく恥ずかしいです。私はタイトルを見ずに「梅森浩一さんの本だ」と思って手に取り、3分ほど立ち読みした後、ふと思いついてタイトルを確認して、顔から火が出そうになりましたよ。思わずレジに直行して購入して、帰宅して読みました(友人には「そこで買うほうが恥ずかしいよ!」と突っ込まれましたが!)。そして現在、この本を持っていることを公表すること自体、けっこう恥ずかしい気がします。しかしこれ、良い本なのです・・・もっと知られて欲しい存在なので、恥を忍んでレビュー。


まずこの本、装丁がかわいいです。結婚式のときに使う「御祝儀袋」を模したデザイン。ルックスもさることながら、紙もちゃんと和っぽい手触りがするものをチョイス(しかもカバーだけじゃなく、本体も和紙調の紙を使用)していて、作った人のこだわりが感じられます。残念ながらブログではお伝えできないので、ぜひ本屋さんに行ったら手にとってみてください。これで1200円はかなりお買い得。・・・ 1200円、高いと思いますか? 画一的なデザインの新書でも900円します。これと比較すれば、このお手軽価格っぷりが伝わるのではないかと思いますが、さてはて。


そして内容。著者は「面接力」や「クビ!論」「残業しない技術」等、人材・人事にまつわる執筆で有名な梅森浩一さん。「結婚する技術」においても他の人材本で説いている基本姿勢を崩しません。すなわち目的を明確に設定し、優先順位を考え、行動せよと唱えています。目的を達成するならば手段は問うな。正確な分析をしつつ、商品力を高め、セールストークを駆使し、相手に「欲しい」と言わせろ。・・・「結婚とビジネスは非常に似通ったプロセスを辿る」と言っていますが、たしかに、言われてみれば、これらの論は両者に相通ずるテクニックかもしれませんね。


何よりも著者らしい主張は「結婚は必ずしも「一生モノではない」と断言していること。仕事と同じで、より良い場所があると思うならばそこに行くことをためらう必要は無いとのことです。彼は仕事についても同じ考え方を説いている次第ですが、家族制度やらなんやらで仕事よりもさらにしがらみの多い結婚・離婚。(日本社会では、たぶん、まだ)アウトローな主張を高らかに唱える人は多くないでしょう。あと10年くらいしたら変わってくるのかもしれませんが。私はこのくだりを読んでいて、「家出のすすめ」で有名な寺山修司を想起しました。50年前くらいに不良になれとか、家出しろとか、そういう人は多くなかったと思うので。


ふたりとも過激な発言をするものの、その根っこはピュアなところも、近しい気がします。

仕事でも人生でも、最後に従うべきは自分の心なのかもしれません。by 梅森浩一

生きることは「出会うこと」です。by 寺山修司


特に結婚する気がない人にも、エッセイ本感覚で手に取ってみてほしい一冊です。*1

*1:男は読まなくてよろしい。