サイエンスと英語
Copy-Editing勉強会にて「『SCIENCE』と『NATURE』は、AmericanEnglishとBritishEnglishのどちらなの?」という話題が出たので、両誌を手に取って眺めてみた。結論:投稿規定にはなにも記述ないものの、両方ともAmerican Englishで書かれている。目についた範囲では、英国人著者の英語もAmerican Englishを使っている。
巻末にjob opportunities(求人広告)が出ていたので、それも眺めてみた。イギリス、アメリカ、オーストラリア、フランス、ドイツなどの研究機関や大学の名前が載っている。こちらもはみな英語(american English)で書かれている。『SCIENCE』には39件載っていて、1件だけドイツ語だった。求人内容は医療系の研究職・ポスドク募集がほとんど。
今更のようだけど、自然科学分野の共通言語は英語だ。素晴らしい研究をしても、英語で発表しなければ、世界的に注目されることは難しい。これを逆に言えば、自国民だけの宝にしたいのなら、自国語だけで発表すれば良い。
・・・なんてことを考えていたら、こんなことを書いている人がいた。
アメリカの議会でIEEEの会長さんだかが証言したところでは、日本で発明された垂直磁気記録方式の論文のほとんどすべてが日本語で書かれており、最近の日本人は英語で論文を書くものだと思ってすっかり油断していたアメリカの研究者達が、日本の研究の進展をまったくフォローすることができなかったということがあるのだというのです。笑い話のような話ですが、終戦直後は日本の水産学の進歩を知りたくて、日本語の論文を翻訳して勉強していたアメリカが、スキを付かれた恰好で垂直磁気記録方式に敗北したというのはなんともおもしろい話だと思いました。
5号館のつぶやき : ほんとうにスゴイ論文は日本語で書いても外国で読まれる
補足しておくと、50年ほど前は日本の魚類学が世界をリードしていて、アメリカ人が日本人の論文を読むために日英翻訳をしていたらしい。その現象が、21世紀の現在にもあった、という話。
id:shiumachiくんから「日本・韓国・中国は2バイト以上文字(16バイト文字もあるらしい)対応について協力することもある」という話を聞いたり、エンコードがうまくいかなくて解読不能になった漢字を見たりすると、「下手に英数字でパスワード作るよりも、日本語で書いたほうが、(世界的に見て)大多数の人にとって「解読不能」な暗号になるんじゃないかな」と思った。が、論文の世界ではそれが起こっていると聞いて、なんとなく嬉しい。予測的中。
以前アイスランドで行われたキャンプ型ボランティアに参加したとき、そこには10か国弱の国から参加者がいた。私以外にもう1人日本人参加者がいたので、日本語で話しかけた。周りは日本語がわからないので、何をしゃべっていても気兼ねなく話せた。オランダ人同士やイタリア人同士の会話も同じく、周りは音が聞こえても何を話しているのかわからない。その様子を見てイギリス出身の子が「うらやましいわ。私たちは何をしゃべっていても英語だから、全部周りに筒抜けよ!」と嘆いていた。
こういう状況が、研究の場でも起こっているんだなあ。