人は誰しも魔法を使いたいと思っている

魔法使いに会うのが好きだった。

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正しく言うと、わたしのまわりには何人か魔法使いみたいな雰囲気の友だちがいて、彼/彼女に会って話すと、まるで異世界に旅をしてきたかのような気持ちになる。そんな彼らに会うのが好きだった。

彼らは人並み外れて何かが好きだったり魔術師のように言葉を操ったり、なにかしら特筆すべきキャラクターがあって、平凡な私はその魔法の片鱗を垣間見ることがあるとドキドキした。彼らと一緒に過ごす時間が好きだった。

魔法使いたちは、しばしば会社員ではない働き方をする。私が会社員生活に入れ込んだり外国にいったりしているうちに、彼らに会う機会が少なくなった。昼間にフツウの仕事をしていると、魔法を意識することは少ない。魔法を使えないほうが生きやすいことも少なくない。

私はフツウの会社員をしている。そんななか訪問先で出会ったひとのふとした一言が、私のアンテナに引っ掛かった。

「人は誰しも魔法を使いたいと思っているんですよ」

それはある技術についての会話しているときにこぼれた言葉だったけど、文脈を離れて私のなかに残った。

魔法使いに会うのが好きだった平凡な私も、魔法を使いたいと思っているのかな?

魔法使いに会えなくて寂しさを感じるときがあるとき……というか、つまり最近、私ももっと何かに熱中したい・もっと何か出来るようになりたいと思うことがある。自分の力ではどこまでいけるかわからないけれど、恐怖を乗り越えて、全力を尽くして、この世界に自分の爪痕を残す。それが私のなかの「魔法」のイメージなのかなぁと、ここのところ、魔法使いに繋がらなくなった糸を眺めながら考えている。

あと、それから、私にとっての「魔法」というのは、時を超えて残るもののイメージもある。

仮に、魔法使いが魔法を使えなくなってしまったとしても、彼らが昔かけた魔法は残ったままそこにある。だから「あなたがかけてくれた魔法は、今も私の支えになっているんだよ」って、もしまた会うことがあったら伝えよう。ごはんくらいおごるからさ、また糸が繋がることを祈ってるよ。

絶望の中を生きる

映画版「Blame!」、予告編を見て一目惚れ、劇場版で見てうっとり、もう一度見たくてNetflixに入会して2度目の鑑賞。

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壊れ続けていく世界を止めることのできる遺伝子を探す最強の主人公。探しものが見つかる可能性はほぼない。人類は次々と排除されていく。それでも主人公は壊れ続けていく世界のなか旅を続ける。2度目の鑑賞中、私はこの絶望的ともいえる世界観が好きなのだなーと気がついた。


私はどうにも根暗で、広い意味で「絶望」を感じるのが好きな性分らしい。だからなのか、自分の生きる国の未来についてはすごく悲観している。
この国の経済規模はまだまだ大きいことは知っている。世界第3位、アジアでは第2位の経済大国である。優秀な人もたくさんいるし、世界的な企業も少なくない。でも人口動態的にどうしても経済は下り坂だし、1年前まで私が関わっていた業界へのお金の流入は先細りだし、保守的で完璧を求める文化は絶えず変化する技術をキャッチアップするためには不向きだし、私はその完璧主義がすごいことは理解しつつも苦手なので息苦しい。そういう意味合いで、私は「この国に帰る=絶望的な世界に帰る」ものと覚悟を決めていたし、異業界に仕事を移した今も大筋ではそういう考え方をしている。

そのいっぽう、5年間色々な国の人と話す機会を得て、自分がどれだけ恵まれてきたか、「絶望」なんて口にするのも恥ずかしいほど平和な環境に生まれ育ってきたのだということも理解している。社会がそれなりに安定して機能してて、美味しい食事を食べることがそこまで難しくなくて、日々の娯楽には困らず、100点満点までいかなくてもそれなりに満足のいく手段で日々の稼ぎを得ることができる。ちょっとしたやる気とお金を出せば、新しい趣味にチャレンジすることもできる。十年先のことを考えると絶望的な気分にしかならなくても、今生きていくことには困らない。楽しいことは色々ある。そんな場所に生まれた私は、幸運だと思う。


経済的に先行きが暗くても、明日会いたい人、行きたい場所、食べたいもの、読みたい本、聴きたい音楽があれば、ひとまずは生きていける。それができるだけの自由を確保できれば、それでいい。最近の私は、そういう日が1日でも長く続くように、今できることをしようと思いながら、毎日を過ごしている。

季節が移り変わって、花が咲いて、ちょっと奮発すればその時々の美味しいものを食べることができて、読みたい本や聴きたい音楽を聴けて、会いたいときに家族や友人に会えて、刺激が欲しければイベントに参加して……、生きるのも悪くない。そう思えることは素晴らしい。


最近、ふとしたきっかけで自分が好きなバンドCoalter of the deepersの歌詞を評したこんな文章を見かけて、自分は絶望的な世界観が好きなのだなーということが、とてもしっくりときたので、書き留めておく*1

特徴的なのが、絶望的な状況であっても絶望しているわけではないこと。状況こそは絶望的なのですが、それでもどうにか生き延びようとする意志が見うけられるのです。もちろんそうでない曲もありますが、「これから」を予感させる終わり方をしている曲が多いようです。
coaltar of the deepersの絶望的世界観について : 炭鉱のカナリア

私は絶望している。でも、それでも生きているし、前に進む。

*1:ふたつを繋げて書いているが、Blame!とCoalter of the deepersに特に共通点はない、私が好きなものであるということ以外には。

将来のためにどうするべきか?

2014年2月の自分の文章を読み返してみた。

将来とは何年後で、将来どうなっていれば自分は満足なのか・・・というのを常に考え続けることは、いつどこにいても大切なことだと思います。

こういうことを考える機会が多いのは、外国にいることのメリットかもしれません。

日本にいても外国にいても、人生とは面倒の多いものです。場所を変えて変化するのは面倒のタイプだけで、全ての憂いがが雲散霧消する楽園は(私を含めた大半の凡庸な人間には)ありません。ここにいる利点と制約は何か、あちら側にいった上での利点と制約は何かといったことを考え続け、覚悟を決めて腰を据えたら一心不乱に戦う。これに尽きるのではないでしょうか。

悩んだときには選択肢の多いほうへ行け、という教えもありますね。

アルメニア旅行と日本帰国

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アルメニア旅について,Twitterでまとめている方がいた。良い写真がたくさんある。アルメニア旅行を考えてる方は,そちらを参考にすると良いだろう。ここにあるのは,ただの個人的な記録。何度も書き直して、いちおう読める状態になったところだけ記しておく。


アルメニアの豊かさは、説明するのが難しい。GDPは一人当たり年3,000ドル程度(日本は32,000ドル程度)、隣国アゼルバイジャンとはナゴルノ・カラバフを巡って半ば戦争状態、もう一方の隣国トルコとも歴史認識を巡って敵対状態、そんな政治・経済環境のなか、国内で発電用資源(ガスや石油)は得られず、輸入も困難なため、理論的には使用停止するべき老朽化した原発(メツァモール原子力発電所)に電力を頼っている。経済状況にたえかねて、また男子は兵役から逃れるため、国を出て外国で職を得る若者も多い。アルメニア人女性は美しいことで世界的に有名なのにもかかわらず、(男性が国を出てしまう割合が多いため)女性の数が多いため、未婚の女性が多い。数字だけ見れば、アルメニアは全然「豊か」じゃない。

参照:アルメニアの厳しい現状 | 不思議な、不思議な「アルメニア共和国」


しかしわたしは10日間のアルメニア滞在中、その豊かさに圧倒され続けた。滞在したのは2014年5月のこと、ガイドとドライバーを10日間雇って周遊するという、いかにも気楽な旅行者ライフスタイルだった。だから快適な滞在をできたのだ、現地の生活の苦労を知りもしないくせに・・・と,自分でも少し思う。しかし私が感動したのは、きらびやかなランドマークではなく、辺境の小さな村にたたずむ築1500年の教会、その教会を村の人々が日常の礼拝に使うことができること、そういった重厚な歴史の存在だ。もちろん街を普通に歩ける治安の良さ、言葉は通じなくても親切な人々、なにげない食材の美味しさも好印象の大きな背景だ。

わかりやすいところで、食事の話から始めよう。アルメニアの食卓には季節の変化に富んだ気候に育まれる真っ赤な完熟トマト、多種多様なハーブ類、そしてあっさりしたフレッシュチーズが並ぶ。焼きたてのラヴァシュという薄焼きパン(インドのナンを発酵させずに焼いたようなもの)に豊富な野菜を挟み頬張ると、香ばしいラヴァシュと、風味豊かなハーブ、甘いトマトの味が混ざり合い、堪らなく美味である。様々なスパイスをつけて焼いたチキンやマトンのバーベキュー(トルコのケバブをあっさりした味付けにしたようなもの)を挟んでもおいしい。肉料理を頼むと、つけあわせとしてジャガイモや玉ねぎを炒めたものが添えられるが、ただ炒めただけの野菜も、新鮮さの成せる技か、ひとかけも残したくない味だった。

豊かなのは味だけではない、レストランも道端の小さなカフェの店員さんも、とても気が利く。チップ制でもないのに、適切に気遣いをしてくれる。英語ができる・できないはそれぞれだが(できない人の方がどちらかというと多い? 通じなくてもなんとなくどうにかしてくれるが)、タイミングよくオーダーを取りに来て、気持ちよく料理をサーブする。日本にいると当たり前のようなサービスだが、日本国外では必ずしも当たり前のことではないということは、いくら強調してもし足りない。資本主義の世界においてサービスは金次第だし、お金を払ってもろくなサービスを受けられない場所もある。


アルメニアという民族と国の歴史の長さ、文化の豊かさについてにも触れておきたい。アルメニアは「東欧」と認識されることが多いが、実際の位置はトルコの東隣なので、地理的にはむしろ中東というほうがしっくりくる。しかし東欧として認識されるのは、おそらくアルメニアキリスト教国であるためだろう。

アルメニアは世界で初めてキリスト教を国教とした国だ。より正確にいうと、「アルメニア聖教」を信仰する国だ。キリスト教がローマ・バチカン法皇に取りまとめられる以前のままのキリスト教で、今も独自路線をとっている。非キリスト者がパッと見てわかるのは、教会の建築様式の違い程度だが、歴史的な経緯もあり、彼らとしてはおおいに誇りに思うところがあるらしい。

10日間の旅を共にしたガイド氏は「キリスト教を宗教として認めないローマ帝国に対して、アルメニア人のXXX(聖グレゴリオス?)が説教を行い、ローマ人を改心させた」という話を幾度も聞かせてくれた。ローマ帝国キリスト教を受け入れて、ローマ法皇をはじめとする教会制度ができる等、少しずつ形を変えて「キリスト教」が諸国で受け入れていくいっぽうで、アルメニアは形を変えずに当時そのままの形で信仰を続けている・・・との弁。

いっぽう、現在の「アルメニア」という国家ができたのは、ソ連解体後の1991年のこと、つい最近だ。ソ連に組み入れられる前は旧ロシア帝国の、さらにその前はオスマントルコというイスラム教の大帝国に統治されていた。またオスマントルコ時代後期は、アルメニア人とキリスト教に対しての弾圧が激しく、アルメニア人大虐殺などもあり、民族的に苦難の時代だった。それより前は・・・複雑なので、興味がある方はwikipedia あたりを参照してほしい。年表を見るだけで、ユーラシア大陸の真ん中、ロシアと欧州と中東の中にある土地の難しさを感じることができると思う。

参照:アルメニアの歴史 - Wikipedia


アルメニアの教会は古いものが多い。しかしその装飾のレベルは極めて高い。スペインやイタリアの教会のようなきらめきはないが、息を飲むほど美しい石の彫刻があまた残されている。特筆すべきは「ハチュカル」と呼ばれる十字架の彫刻。教会の壁や敷地内のタイル、墓石などに使われる。長辺1メートルほどの長方形の石タイルであることが多いが、サイズやスタイルにきまりはない。1メートルより大きいものも、小さいものもある。アルメニアで採掘された石に十字架をモチーフとした飾りを描いている・・・という点は皆共通しているものの、きわめて自由度が高い。このハチュカルを眺めて回るだけでもアルメニアを楽しく一周できてしまうだろう。

アルメニアは豊かだ、ということを伝えたいだけなのだが、どうしても長くなってしまう。自分の文章力のなさもあり、いくら書いてもうまく伝わる気がしない。しかし、いくらでも言葉を連ねたくなるほどに、私は心を揺さぶられた。


その頃の私は、自分が滞在していた国に疲れていた。お金があれば大概のことはなんとかなるが、歴史や文化や温帯気候はお金では買えない。私がいた国ははっきりとした資本主義国だったので、お金を払ったぶん人は動く・それ以上は動かない。いっぽう外国人として働くためのビザで存在を認められている自分は、お金を稼げなければ存在価値がない。

とても明快な論理で、わかりやすい。嫌いではなかった。でも、自分がそこに住み続けたいのか? いつまでも右肩上がりに稼ぎを上げていきたいのか? 常夏が嫌になったら別の季節がある国に旅行すればいいのか? と考えると、よくわからなくなった。怪我や病気をしたら、仕事がなくなったら、ビザが更新できなくなったら等々、様々な「たら・れば」を考えて、(今思えば)不安から目をそらすために、永住権を取ろうとした。

そんなときにアルメニアのお金では買えない豊かさを見て、意地になって資本主義的な豊かさを追求しなくても、幸せに生きることはできるのだと心が揺れた。ソ連時代は研究者をしていたというガイド氏が何度か語った「ソ連崩壊後,アメリカに(研究者として)来ないかと誘われた。でも自分はここに残ることを選んだ」という言葉が耳から離れなかった。私も日本に帰りたいと思った。四季があって自然がある日本に帰りたいと思った。

2016年 読んだ書籍

上半期
1.「投資で一番大切な20の教え」ハワード・マークス
2.「疲れない脳をつくる生活習慣」石川善樹
3.「ワーク・ルールズ!」ラズロ・ボック
4.「僕だけがいない街 (コミック)」 三部けい
5.「こんな大人になるなんて」吉川トリコ
6.「エッセンシャル思考」グレッグ・マキューン
7.「ヘヴン」川上未映子
8.「人生における成功者の定義と条件」村上龍
9.「選択の科学」シーナ アイエンガー
10.「働く君に伝えたい「お金」の教養」出口治明
11.「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」ブラッド・ストーン
12.「ストレングス・リーダーシップ」トム・ラス,バリー・コンチー
13.「ビジネスマンのためのメンタル・タフネス」ジム・ピーター,ピーター・マクラフリン
14.「G戦場ヘヴンズドア(コミック)」日本橋ヨヲコ
15.「リーダーは自然体」増田弥生,金井壽宏

下半期
16.「はじめのコーチング」ジョン・ウィットモア,清川幸美
17.「14ひきのアトリエから いわむらかずおエッセイ集」
18.「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015」橘 玲
19.「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」岩崎夏海
20.「老けたくなければファーストフードを食べるな 老化物質AGEの正体」山岸昌一
21.「コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか」旦部幸博
22.「マーケット感覚を身につけよう」ちきりん
23.「プロコーチのコーチングセンスが身につくスキル」岸英光
24.「私の財産告白」本多静六
25.「打ち合わせの天才」野地秩嘉
26.「僕は君たちに武器を配りたい」瀧本 哲史
27.「エマソン妥協なき経営」チャールズ・F・ナイト
28.「人生がときめく片づけの魔法」近藤麻理恵
29.「アダルト・チャイルドが自分と向きあう本」
30.「それをお金で買いますか」マイケル・サンデル
31.「君たちはどう生きるか」吉野源三郎
32.「B(ベー)ーブラームス20歳の旅路ー(コミック)」留守key
33.「甘いお菓子は食べません」田中兆子
34.「図解コーチングマネジメント」伊藤守
35.「マネジメント[エッセンシャル版]」ピーター・F・ドラッカー
36.「どう生きるか、どう死ぬか「セネカの智慧」」ルキウス・セネカ
37.「潜在能力をひきだすコーチングの技術」ジョン ホイットモア
38.「ブロックチェーンの衝撃」ビットバンク株式会社&『ブロックチェーンの衝撃』編集委員会
39.「ゼロからの快適スイミング ゆっくり長く泳ぎたい!」
40.「ゆっくり長く泳ぎたい! 超基本編」
41.「虹を待つ彼女」逸木裕
42.「中小企業診断士の実像」安田龍平,荒木健
43.「図解入門ビジネス 最新マーケティング・リサーチがよーくわかる本」
44.「絵でわかる感染症 with もやしもん」岩田健太郎,石川雅之
45.「図解入門業界研究最新医薬品業界の動向とカラクリがよ~くわかる本[第5版]」荒川博
46.「数学放浪記」ピーター・フランクル
47.「コーチング・マネジメント―人と組織のハイパフォーマンスをつくる」伊藤守
48.「異文化理解力」エリン・メイヤ
49.「永い言い訳西川美和
50.「アダルト・チャイルドが人生を変えていく本」
51.「明解医薬品産業」漆原良一
52.「命の風〈上〉」デビット・ゾペティ
53.「ブルーサーマル(コミック)」小沢かな
54.「POCTが変える医療と臨床検査」
55.「英語で読む最新世界経済入門」井上邦夫
55.「まんが現代史 アメリカが戦争をやめない理由」山井教雄