意識しなければ、感じることもない

【あらすじ】
「僕」は舞坂町に住み、となり町にある会社に通う、平和な生活を送っていた。
しかしある日、彼が住む町ととなり町の間で戦争が始まる。
しかし「僕」の日常は何も変わらないように思えた。
町の役場から依頼された「偵察員」を引き受けるまでは。


第17回小説すばる新人賞受賞作。
まだ文体は荒削りだし、地蔵を「仏」と書く等、調査がちょっと足りない点もある。
しかし作品を一貫して流れる核としたテーマがある。それが評価された要因だろう。


「あなたはこの戦争の姿が見えないと言っていましたね。
もちろん見えないものを見ることはできません。
しかし、感じることはできます。
どうぞ、戦争の音を、光を、気配を、感じ取ってください」



私は今日も、いつもどおりの平和な1日を過ごす。
時々、まるで時が止まっているかのように思えてしまう。
しかし、世界は確実に動いている。


見ようとしなければ、見えない。
聴こうとしなければ、聴こえない。
触れようとしなければ、感じることもできない。