冠詞むずかしい
数日前から日向先生がTwitterで冠詞についてあれこれ取り上げてらっしゃる。仕事でメールを書いていて、最近何度か「aを使うべき? theを使うべき?」と悩んだのでタイムリーな話題だったので、同氏が紹介していた日本人大学生が冠詞を扱えないことをテーマにしている論文をさっと読んだ。
日本人大学生が冠詞を使えないことに焦点を当て、定型フレーズでの冠詞の扱いと、自分で考える必要のあるときはコンテクストが大事だよと説く論文(英文)。ir.iwate-u.ac.jp/dspace/bitstre…
— 日向清人さん (@hinatakiyoto) 4月 4, 2012
Collocations with Articles
- What's the time?
- the present time is uniqueなのでtheがつく。
Syntactic factors in Article Use
- Matsui is the best baseball player in the world.
- 最上級のときは基本的に常にtheがつく。なぜならベストなものはunique referentだから。
Pragmatic Factors in Article Use
道で通りがかった人にthe nearest drug storeはどこかと聞かれて"that's the right inside the terminal"と答える。この時点で返答者は質問者が「the terminal」がどこにあるかを知っているものだと仮定している。もし質問者が"where's that terminal?"といえば"Oh, you're not from around here."となるだろう。
Semantic Factors in Article Usage
- That was the boy who broke the window
- That was a boy who starred in the play, not a girl
1つ目はspecific and unique referent. 言い手も聞き手もそのboyが誰かを知っている。
2つ目のboyは劇中で主役をとっているのがboyである(girlではない)という意味だけで、どのboyかを示してはいない。unique referentではない。
Conclusionから抜き書き
Why are native speakers so good at using articles? One reason is that they know how articles are used in an abundance of fixed expressions. (略) On the other hand, native speakers can also process how syntactic, pragmatic, and semantic constraints on article use when producing a novel utterance.
One way is to encourage students to become aware of how articles are used in fixed expressions (略) A second way is to give learners a simple rule of thumb for article use for reference
という感じで、冒頭の日向先生の「定型フレーズでの冠詞の扱いと、自分で考える必要のあるときはコンテクストが大事だよ」というまとめ。
仕事で悩んだこと
通常、論文の要素であるtitle等はthe title, the abstract, the keywords等とtheを付けて書く。しかし複数形のときや「このジャーナルに掲載された論文は、それぞれの論文ページに中国語アブストラクトが入る」のような表現のときthe abstractsというか? an abstract / abstractsというか?を悩んだ。
ひとまずのFAは"In this journal, each article has the Chinese title/abstract/keywords in its own webpage"
日向先生tweetから使えそうなものを抜き書き
冠詞判別上まずはIs there a unique referent?と問い、定冠詞の要否から考えるHuckin & Olsen のモデルはYuleもExplaining English Grammarの中で紹介しているぐらいで有用。思考経済にも適っているのに、何故か普及せず。
— 日向清人さん (@hinatakiyoto) 4月 4, 2012
aなのかtheなのかは、ディスコース(相手のある、ひとまとまりのやり取り)の中で、話し手にとって個別具体的な指示対象であるモノ・コトが相手にとっても同じか否かの問題で、yesならthe、noならa/anよいうことです。
— 日向清人さん (@hinatakiyoto) 4月 4, 2012
theをつけていいのは、(a) 話し手自身、具体的な(specific)なモノ・コトを指示対象にしていることに加え、(b) 相手にも共通の認識のあること(hearer knowledge)ですが、(b) はネイティブの子どもも苦手。
— 日向清人さん (@hinatakiyoto) 4月 4, 2012
1/2 英語ネイティブは、3、4歳で指示対象が個別具体的なものか否かの判別(specific vs non-specific) ができるようになりますが、hearer knowledgeに応じてa/theを使い分ける感覚に苦労するようで、子供が(自己中心的世界観で)、
— 日向清人さん (@hinatakiyoto) 4月 4, 2012
2/2 Where's the black tape? などと、何のことか相手が知っていて当然のような口の利き方をすれば、親は、What black tape? と、間接的にたしなめますので、子供もtheが that同然だというセンスが身につくのでしょう。
— 日向清人さん (@hinatakiyoto) 4月 4, 2012
などなど、奥が深い。