2010年11月 目についた出版関連記事
自分が気になったところを書き出しておく。
科学出版関連:論文の山を越えて
Global science: Climbing Mount Publishable | The Economist
- 中国人研究者による研究は、英語論文の引用数が目立って少ない。アメリカ人研究者だと平均14.3回引用するが、中国人研究者だと平均4.6回。この傾向はインド人研究者にも見られる。原因は中国の研究レベルがまだ高くないのか、それとも欧米や日本の著者は互いを引用し合うという歴史的なバイアスがあるのかと考えられている。
- 中国の特許は2003年から2009年にかけて件数が26%増えた。が、中国の特許庁は特許を認可すればするほど収入が入るようになっているから、中国特許は数が増えても質が当てにならない。
- 2007年までのデータを見る限り、先進国各国が研究開発費を削るなか、日本の科学研究費は対GDP比3.5%まで増えていた。EU諸国が対GDP比2.0%以下しか研究開発費に投資していないのに比べると、日本はかなり研究にお金を注いでいる。
- かに注:しかし、中を見ていると博士をとっても食べていけないポスドク問題とか、研究費が足りなくて汲々とする研究室とか色々ある。それはどうしたことだろう? Twitterでも「そう、技術者の冷遇はひどいです。若いポスドクもひどい。これでは理科系に進まなくなるのは当然です。「構造改革」やっているつもりで、首をどんどん切って、気づいたらますます負けていきます。悪循環。「国を売る、国が売られる」とは、こういうものなんでしょう。今度は沈む船から逃げ出しますね」という発言が理工系の人によって幾度もRetweetされていた。
コメント欄もおもしろい。最も注目を集めているコメントがリベラル!
The future belongs to all who recognize the opportunity and need to work together across geographical and disciplinary boundaries to solve problems and develop innovative solutions for our common benefit....We are truly living in exciting times!
トルコのメディア事情
Turkey and press freedom: Publish and be damned | The Economist
EUが(EUに加盟したがってる)トルコに対して「隣国のキプロスに対して港や空港を開放したりして関係改善しなされ」と勧告。他にも宗教的マイノリティの扱いを改善しなさいとかクルド言語の放送に関する制限を撤廃しなさいとか色々言われているけど、他にとりわけ大きく注意されている事項は、トルコの報道規制!
トルコでは現在のところ40人のジャーナリストが投獄されていて、裁判待ちもしくは実刑判決を受けている。新聞で政府に対してへたに批判的なことを書くと記者はクビになっちゃうし、首相が「everybody is free to write what they want’と言っているわりに、国境なき記者団による世界報道自由ランキング では178カ国中138位という状態。
ロシアのメディア事情
Media freedom in Russia: Smashing the messengers | The Economist
ロシアでは最近ジャーナリストが見せしめ的に殺されかけた。しかもそのやり方というのが苛烈で、友人曰く「書くことができぬよう指をつぶされ、話すことができないよう顎を砕かれ、歩くことができぬよう足を折られた。」医者は彼が痛みでショックを起こさぬよう彼を人為的に昏睡状態にした・・・というのだから。
国境なき記者団曰く、ロシアではここ10年で少なくても22人のジャーナリストが亡くなっている。もちろんけが人はもっとたくさんいる。ちなみに世界報道自由ランキングではトルコよりイラクより下にランクされている。
そしてロシアのジャーナリストが殺され注目を集めた事件のほとんどは未解決のまま放置されている。理由は政治システムだろうね。
シンガポールの出版事情
Freedom of speech in Singapore: You can cage the singer | The Economist
シンガポールの死刑制度に関する本『Once a Jolly Hangman.』を出版したイギリス人が裁判にかけられている。その判決がもうすぐ(11月10日に)出るよ、という記事。とにもかくにも、この国の(・・・な)司法の名誉を中傷したとして有罪判決でしょう。(建国の父とも呼ばれ、現首相の父親である)リー・クアン・ユーが裁判に何度も勝っている話とか出てきたりして、政治と司法がちゃんと分離できてないんじゃないの? という指摘が色々。
で、本日の新聞にこの裁判結果が載ってた。
TODAYonline - Comprehensive local and international news and analysis
6週間の実刑判決+2万SGドルの罰金+裁判関連費用として5.5万SGドル。罰金支払いを拒否すると服役期間が2週間延長になる。
このイギリス人著者Alan Shadrakeは76歳、本を出版したのは今年7月、出版の翌日に逮捕された。またWikipedia曰く、別方面からも名誉毀損で訴えられている(詳細未確認)。