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学術論文が出版されるまで

北大の生物系研究室のブログにて、研究者・論文を書く立場から見た、論文の作成〜acceptまでの流れが紹介されていました。
福井 学の低温研便り: 学術雑誌掲載論文ができあがるまで

自分も出版側の目線で「学術雑誌掲載論文ができあがるまで」を書こうと思いつつぐずぐずしていたので、良いきっかけをいただいた気分。
というわけで、今日は学術論文が出版までどういうふうに流れていくか、出版社の一末端社員の視点から書いてみます。といっても自分はまだ勉強中の身なので不足点もあるかと思いますし、雑誌や出版社によっても違う点は多いと思います。また自分の所属先とは関係なく、自分の勉強のために書いていることをお断りさせていただきます。

論文の流れ

いわゆる国際英文雑誌に論文が載るまでの流れは、こんな感じになっています。

  1. 著者による論文投稿
  2. 編者による門前払いか否か判定
  3. 編者による査読者探し
  4. 査読者決定
  5. 査読者による査読 複数人で行われることも多い
  6. 査読者によるAccept/Rejectの判定 複数人で行い、編者が判定を集めて是非を決定する場合も多い
  7. 編者によるAccept/Rejectの通知 条件付きAcceptやRejectになっても改善案が提示される場合もある
    • Rejectになった後もあれこれやりとりをして最終的にAcceptを得るケースも多い
  8. 編者から編集事務局/出版社に最終版原稿送付
    • 著作権譲渡書もこの時点で著者から回収され、出版社に渡されることが多い
    • ネイティブ校閲者による原稿の英文校閲が行われることもある。出版社への原稿送付直前に行われるケースが多い
  9. 組版 実際に出版するときのスタイルに組み直される
    • DOI=デジタルオブジェクト識別子・オンライン上のドキュメントに付与する識別子はこの時点で付与されることが多い
  10. 校正刷の完成
  11. 著者・編者/事務局・出版社によるチェックおよび修正点提出
    • 著者と編者/事務局で意見が異なる場合は要調整
    • ジャーナルのスタイルと反する修正も要調整
  12. 校正刷の修正
  13. 出版社による最終確認 著者・事務局も行う場合もある
  14. 1論文ごとにオンライン出版 OR 1冊分の分量をとりまとめた後にオンライン出版
  15. 印刷所に原稿が送られて、カバー等々をそろえて印刷物の完成
    • 別刷りも同じタイミングで印刷することが多い
  16. 倉庫に印刷物が納品
  17. 各購読者宛てに発送≒印刷物の出版

解説

7.までは「学術雑誌掲載論文ができあがるまで」で書かれている通り、著者と編者の間のやりとりです。この期間の所要時間は、分野によってかなり差があるようです。数学(とりわけ純粋数学)では1年以上かかることもザラにありますし、動きの激しい医学・生物分野だと3ヶ月もかからないこともあるそうです。

また、8.以降も雑誌によってかなり幅があります。特に編集事務局がこだわりを持っているところだと、校正を何度もかけてあっちを調整してこっちを調整してとなります。また1論文ごとオンライン出版に対応している雑誌と、していない雑誌があります。対応していない雑誌の場合、たとえ早めに原稿が完成しても定められた出版月まで待たねばなりません。場合によっては「次号は○○特集にするから、この論文は次次号に掲載」ということもあります。

もちろん各段階で色々問題が発生することもあります*1ので、その都度いろいろな人が調整を行い、論文がオンラインの恒久的ドキュメント/印刷物として出版されるわけです。

*1:たとえば「印刷」ひとつとっても、カラーの色味が思うとおりに出なかったり部数が時によって異なったり別刷りが同時印刷だったり別印刷だったり。またPDFでは問題なかった数式がオンラインにあがった途端文字化けを起こしたり。etc.etc...