「ウェブ時代をゆく」の感想を書きたいと思ったのだけど、うまく書けない。面白くて、あっという間に読み切ったのに、今の自分にしっくり来ない。24歳の私が、ターゲットとする読者層から外れているからかもしれない。代わりに、先週水曜に丸善であった講演会に行っての感想を書く。
「ウェブ時代をゆく」の著者は、梅田望夫さん。著者紹介で「梅田先生」と呼ばれていたけど、梅田さんは「先生」という呼ばれ方が似合わないと、私は思う。1年半前に参加したシリコンバレーツアーでお会いして受けた印象は、からっとしたスマイルの似合う、優しいおじさま。著書を読んでも、今回の講演会を聞いても、その印象は変わっていない。遠い高みにいる先生ではなく、一歩前を走っている大人。そういう「普通の人」のことばとして、私は梅田さんの文章を読む。励まされる。生きるのも悪くないなって思う。
残念な気持ちとは言ったけど、生き方に筋を通して一所懸命やってきた自信はあるんです。僕のようなRest of us(※編集部注:ごく一部の優れた能力を持つ人以外の人々。詳しくは前編を参照)、似たような感慨を持ちながら生きている人は多いと思うんだよね。Rest of usの生き方があるとは誰からも教わってない。そういう道筋があるなんて。だけど、多くの人の人生はそんなものですよね。
こういう言葉がするりと出てくるところが素敵。地に足が着いた前向き感。梅田さんの文章は、優しいお父さんのような匂いがする。
ところで。私は数学(や他の科学分野)の書籍編集に関わっている。「数学」というキーワードを出すと、「(自分は数学が苦手だから)すごいね」と言われることが多くて、ちょっと悲しい。だから、梅田さんが時折「数学を好き」と言ってくれるのがとても嬉しい。Q&Aセッションでの「僕が1番怖いのは(自分に)事実誤認があること。(事実誤認があると、)後の章で語ることの土台が揺らいでしまうから。」というコメントを聞いても、この人は数学(論理)を大切にしているのだなと理解できた。
講演の内容は、CNETにほぼ全文掲載してある。
http://japan.cnet.com/column/pers/story/0,2000055923,20361203,00.htm
http://japan.cnet.com/column/pers/story/0,2000055923,20361235,00.htm
閑話休題。ご本人も認めていらしたので書いておくと、「頭で読む読書」がしたい人、すなわち新しい情報・事実・知識が欲しい人は「ウェブ進化論」を読んだほうが良い。「心で読む読書」がしたい人、すなわち生きるうえでの糧が欲しい人には、「ウェブ時代をゆく」。糧+ウェブに関する知識が仕入れられてしまう、一粒で二度美味しい本だと思う。
- 作者: 梅田望夫
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ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)
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