回転

東京・初台にあるICCのイベントに行ってきた。

エマージェンシーズ!008
八木良太「回転」
http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2008/Openspace2008/Works/emergencies008_j.html

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話していたこと

作品の映像を見ながら、いろいろコメント。光る本、虹の作品、星の王子様、砂時計、氷のレコード、などなど。言葉で説明しにくい、実際にものを見たくなる作品が多い。

光る本が、特におもしろかった。白い本のページをめくると、本の内容が投影されたり、映像が流れたりする。近未来的な物語の中に出てきそうなマテリアル。アート作品として面白いというのもあるし、個人的には「これも電子ブックだな」という感想。白い本に、おそらくプロジェクタで投影しているので、映像の流れ方もスムース。DSの「文学全集」やKindleは、文字データを取り扱うことを念頭としているけれど、美術書やグラフィック関連のコンテンツビジネスにも使える気がする。*1
今現在、展示しているところはないけれど、将来的にいろいろな人の作品を集めて展示したいと仰っていた。期待。

氷のレコード

氷で作ったレコードで、音楽を流す。機材は普通のレコードプレイヤー。レコードに針を落とすと「Moon River」が流れる。普通のレコードと変わらない。でも、プレイヤーの上で回っているのは、半透明な氷のレコード。常温下の氷は、時間が経つと、溶ける。1番が終わって2番に入るか? くらいのころ、ループに入ってしまった。止めずに流し続けていると、いつの間にかループから抜け出す。だんだん音が小さくなる。また別のところでループにはまる。ノイズが増える。音が小さくなる。Moon Riverの歌詞が、聞き取れなくなる。定かではないけど、メロディはわかる。ループしていることはわかる。音が小さくなる。音楽なのかノイズなのか、だんだん解らなくなる。音はまだ聞こえる。でも、すでに、音楽の体は為していない。針が止められる。レコードが外される。プレイヤーの上、透明な液体が残る。

寒い時期にかけると長く楽しめる。いずれにしても、消えてなくなることに変わりはないのだけど。レコードの目的が果たされていない、音の保存だけでなく、自身の保存もできないレコード。思い出の音楽が入った氷のレコードを作って、記念日のプレゼントにする。とか、ちょっとロマンチックかもしれない。一度だけ聴くか、ずっと保存しておくか。長時間停電になったり、何かが起こって、一度も再生しないうちに溶けちゃうリスクも、またロマンチック(笑)。

元になるレコードがあれば、どんなものでも氷のレコードに出来るらしい。著作権法にどうなのかな?という話がちょっと出る。でも、一瞬で消えてしまうから問題にはならないでしょうという話で、落ち着く。

印象に残った言葉

「ものとしてそこに何かがあって欲しい」
「楽器をつくるのが楽しい時期があった」
「実空間と映像空間のズレが生じる」
「ほんのわずかな隔たりで在る、2つの世界で、全然聞こえるものが違う」

被膜1枚で隔たった、2つの世界。それを表す方法は何千何万通りとある。どれを選ぶか、どう実現するか、どう見せるかで、個性が表れる。
話している八木さんはプレーンで癖のない人のように見えたけど、表現を見ると、そうじゃないことがわかる。そうじゃないというのは、奇をてらっているという意味ではなくて。作品もプレーンだし、まっすぐなのだけど、個性の輪郭が際だっている。まっすぐに面白い。http://www.lyt.jp/

*1:と、思ったら特許出願しているらしい。http://www.lyt.jp/portfolio.phpの「INFOPAGE」