天才は無意識に努力する

アンドレ・ヴェイユ自伝〈上〉―ある数学者の修行時代
1998年に亡くなった、天才的数学者ヴェイユの自伝。


パリ生まれのユダヤ系で、インドに惚れ込み、兵役を拒否してアメリカに逃れ、有名大学の教授を歴任した数学者。というかなり変な(だけどすごい)人です。また兄妹そろって才人で、妹のシモーヌ・ヴァイユは思想家として有名です。


上巻ということで、幼少時から学生時代、そして26歳にインドから失業状態で帰国するくらいまでの経緯が書かれています。まだ若い頃の話なので、面白いというより突っ込みたくなるところが多かったです。当たり前のように飛び級(普通の成績じゃできません)を何度もした話が出てきたり、(ギリシャ詩の話をしながら)『人類の歴史において、きわめて優れた才能の持ち主だけが重要なのであり』なんて一説が出てきたり。「誰も彼もがあんたと同じアタマを持ってると思うな!(怒)」という気分になります。


しかし、たしかに、この天才、よく勉強しているんです。フランス語もドイツ語も英語も話せた上で、サンスクリット語にまで手を出している。ギリシャ詩もおそらくギリシャ語で読んでいますし、もちろん数学についてもオールジャンルカバーしています。数学と一口にいっても広いのですが、どんな分野の数学者と会っても語り合っていた様子です。そして何より山に登っていても、インド哲学にはまっていても、旅行をしていても、常に頭の片隅で自分の研究対象について思いを巡らせている。


これだけやっていたら、そりゃあ何か成し遂げられるよね、、、と思えるくらい、四六時中数学していた雰囲気が感ぜられます。普通の人が「努力」と思うことを無意識にずっと続けられる・・・そういう性質が、天才の要素のひとつなのでしょうね。